非上場株式の低額譲渡、課税関係に注意!

2026.08.04

事業承継

非上場株式の低額譲渡、課税関係に注意!

はじめに

日本の企業のほとんどは証券取引所に上場していない、非上場会社です。

非上場会社は、株主と経営者が一致していることが多いです。

そのため、非上場会社の多くは、後継者へ自社の株式を承継する場面が生じます。

 

自社の株式の承継方法としては、贈与・譲渡(売買)・相続といった手段がありますが、

遺留分対策や金銭に変える目的で、譲渡による承継を選択されるケースも見受けられます。

 

非上場株式は、一般的に評価額が高額になる傾向があります。

親族間で自社の株式を売買する場合に、「後継者の負担を少しでも軽くしたい」という思いから、

低い価額での譲渡を検討される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

本稿では、非上場株式の低額譲渡について解説させていただきます。

非上場株式の時価とは?

非上場株式の時価といっても、その評価方法は一つではありません。

M&Aの企業価値評価等で使う、DCF法や時価純資産価額法による評価や、

相続や贈与の際に用いられる相続税評価など、目的に応じた様々な評価額が存在します。

 

〈贈与・譲渡・相続の際の時価は?〉

非上場株式の贈与・譲渡(売買)・相続の際に用いられる時価は、

国税庁で公表されている「財産評価基本通達」に則って評価する方法が基準となります。

 

〈原則的評価方式と特例的評価方式〉

財産評価基本通達に則った評価は、株主の親族関係の有無や議決権比率などに応じて、

「原則的評価方式」又は「特例的評価方式」が適用されます。

原則的評価方式は、評価会社の「配当・利益・純資産」を業種が類似する上場会社と比較して評価する

「類似業種比準価額方式」と、

評価会社の資産・負債を相続税評価に洗い替え、その差額から含み益に係る法人税相当額を控除した

純資産を基に株式を評価する「純資産価額方式」の2種類を用いて算定します。

 

低額譲渡の場合の課税関係

非上場株式の譲渡価額は、当事者間の合意によって、自由に設定することが可能です。

しかし、時価より低い価額で譲渡した場合、想定外の課税が生じる可能性があります。

 

課税関係は下記の図のように、売手・買手が個人か法人かによって異なります。

【売手が個人・買手が個人の場合】

<個人間の低額譲渡>

(売手)

個人間で非上場株式を時価(相続税評価額)よりも低い価額で譲渡した場合、

売手は通常の株式の譲渡と同様に、譲渡価額400と取得費100の差額300に対して、

20.315%の税率で課税され、所得税等・住民税の額は約60となります。

 

(買い手)

買手は時価よりも有利な価額で非上場株式を取得したことになります。

そのため、時価1,000と譲渡価額400の差額の600は、実質的に贈与を受けたものとみなされ、

差額600に対して贈与税が課税されてしまいます。

仮に贈与税率が55%だった場合の贈与税額は330となります。

 

【売手が個人・買手が法人の場合】

<個人と法人の低額譲渡>

個人が法人に非上場株式を譲渡する場合、その時価は個人間取引で用いられる相続税評価額ではなく、

売手側は所得税基本通達59-6、買手側は法人税基本通達9-1-14に基づいて評価が行われます。

 

(売手)

個人が法人に対して資産を著しく低い価額(時価の2分の1未満)で譲渡した場合には、

時価(所基通59-6)で譲渡したものとみなされます。

この場合、時価1,200と取得費100の差額1,100に対して、

20.315%の税率が適用され、所得税等・住民税の額は約220となります。

そのため、譲渡対価は低額であっても、所得税の計算上は時価を基に課税される点に注意が必要です。

 

(買い手)

買手は法人にとっての時価(法基通9-1-14)よりも有利な価額で非上場株式を取得したことになります。

そのため、時価1,200と譲渡価額400の差額800に対して法人税が課税されます。

仮に実効税率を30%とした場合の法人税額は240となります。

 

個人間の低額譲渡と異なる点は、法人には「贈与」という概念が無いため、

買手の法人は売手個人から800の「受贈益」を受けたという考え方になり、

受贈益の800に対して法人税が課税されてしまいます。

最後に

今回は、非上場株式を低額で譲渡した場合の課税関係について解説いたしました。

下図は、低額譲渡をする相手ごとに課税関係を整理したものです。

非上場株式の取引は課税関係が非常に複雑です。

相手のために低額で譲渡したつもりでも、結果として相手や自身に

意図しない税負担が生じる可能性があります。

 

また、非上場株式の承継にあたっては法務手続きが必要となる場合があり、

税務・法務の両面から慎重な対応が求められます。

そのため、非上場株式の承継をご検討の際には、専門家へ相談することをおすすめいたします。

 

なお、弊社では事業承継に特化した部門がございます。

初回相談は無料で承っておりますので、事業承継の際は、お気軽にお問い合わせ・ご相談ください。

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